猫では、トータルケアが出来るよう猫風邪・皮膚科・歯科・口内炎・腎不全や甲状腺機能亢進症などの慢性疾患に力を入れて治療しております。
猫ちゃんは環境の変化に敏感な子が多く、一度嫌な経験をすると治療を受け付けてくれなくなってしまう子もいます。当院では、なるべく猫ちゃんに負担をかけないよう、その子の性格を意識した診療を心がけております。
なるべく通院を減らす・入院させない治療法をご提案出来るようにしています。
肥大型心筋症とは、心臓の筋肉が内側に向かって厚くなり、心室が狭くなってしまうことで
体に十分な血液を送ることが出来なくなってしまう病気です。
体に十分な血液を送ることが出来なくなるので、体はバランスをとるために心拍数を上げたり、血圧を上げたりします。
肥大型心筋症は猫の心筋症のうち、約2/3を占めると言われています。
◆好発品種
アメリカンショートヘアー、ラグドール、メインクーン、ブリティッシュショートヘア、スコティッシュフォールド、
ペルシャ、ヒマラヤン、ノルウェージャンフォレストキャット、などが含まれます。
また、日本猫は上記の品種が混ざっている可能性があるので、肥大型心筋症のリスクを持っている可能性があります。
◆年齢と性別
年齢は6カ月から16歳とされていて、どの猫ちゃんにも起こる可能性があります。
◆症状
初期の段階では、目に見える症状はほぼありません。
逆に言うと、飼い主さんからみて症状が目に見える状態になっていると、病気はかなり進行していると言えます。
代表的な症状としては、
少しの運動で呼吸が荒くなってあまり動かない、呼吸困難、歩き方がおかしくなり、立てなくなる(この時、すごく痛がる)、があります。
全身に回る血液が少なくなるので、その分全身に回る酸素の量も少なくなるため、呼吸が苦しくなります。
また、体が血圧を上げようとした結果、肺の動脈で血液が渋滞し、肺水腫になったり、胸水が溜まることもあります。
このため、呼吸が荒くなったり、呼吸困難になります。
心臓の動きが悪くなると、血液の流れも悪くなり、血管や心臓の中で血液が固まってきます。
これが「血栓」となり、体のどこかの動脈に詰まって、塞栓症を起こします。
詰まる場所によって症状は様々ですが、
特に多いのが、後ろ脚へ向かう動脈に血栓がつまり、急に麻痺がおこり、痛みが強く出る症状です。
大声を出して騒いだり、肉球が青かったり白かったりします。この時、場合によっては死に至ることもあります。
また、いつもと違う場所におしっこをもらしたり、体の動かし方がおかしい場合も注意が必要です。
◆早期発見・早期治療のために
上記のように、症状が出てからの対処ですと、病状が進行してしまっています。
そのため、好発品種の場合、早期発見、早期治療のためには、「検査」が重要となります。
具体的な検査方法は、超音波検査と血液検査が有用です。
超音波検査では、心臓の筋肉の厚みがどれくらいか?心室の大きさは狭くなっていないか?
心室と心房を分ける弁は変形していないか?血液が逆流していたり、流れがおかしくなっている場所がないか?などを見ていきます。
血液検査では、同時に心臓の変性の度合いを表すたんぱく質を検査しておくことにより
治療の経過やお薬との相性をある程度把握できるので、併用することをおすすめします。
◆治療
心臓の病気というものは、基本的には完治しない病気です。
そのため、病気が進行しないように、心臓が長持ちするように、血栓ができないように、お薬を使っていい状態を維持していくようになります。
お薬は、「治すため」ではなく、今現在状態があまり良くなければその状態をある程度改善し、「悪くならないようにするため」のもので、
場合によっては「一生涯続ける」ものになります。
また、お薬を飲んでいれば、それで大丈夫というわけではなく、状況によってはお薬の種類を変えたり、量を調整しなければなりません。
定期的な検査を行って、心臓の状態をチェックしていきましょう。
肥大型心筋症は突然死の可能性もある病気です。
猫ちゃんの性格によっては難しい場合もあるかもしれませんが、悪化してしまう前に
健康診断をして早期に病気を発見して、早期に治療を開始することをおすすめします。
血液検査を有効活用する方法もあります。
シャイな猫ちゃんにはできる限りの検査で経過観察をしていきましょう。
また、内服薬を飲ませるのが難しい場合はご相談ください。
一緒に投薬方法を考えましょう。